第162章 彼の首に腕を回し、抱擁をねだる

南雲玲奈は、心臓がずしりと沈んだ。

このまま落ちたら、顔からいって鼻も頬もぐしゃぐしゃ――そんな最悪の光景まで、脳裏に浮かぶ。

だが、まさにその瞬間。

ぐいっと強い力が彼女の腰を抱き寄せた。

床に叩きつけられる寸前、誰かが彼女を腕の中へしっかり受け止める。勢いのまま数歩よろめき、背中が本棚に当たって止まった。

「……っ」

低い、喉の奥で潰したような呻き声。

南雲玲奈は息が乱れたまま、慌てて顔を上げた。

目の前にあったのは、男の整った横顔――いや、近すぎて「目の前」というより「至近距離」だ。くっきりした顎のライン、伏せ気味の長い睫毛、眉間に寄った皺、きゅっと結ばれた薄い唇。吐息...

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